本会では、6月23日、次代を担う若い世代に農業農村整備を理解していただくことを目的に、令和元年以降自粛していた農業用施設の現地見学会を、徹底した感染対策のもと、3年ぶりに開催しました。岩手大学農学部濵上邦彦准教授、山本清仁准教授の引率のもと、同学部食料生産環境学科3年次生20名が、豊沢川地区の農業水利施設の役割等について研修を行いました。

 豊沢川土地改良区の水がめである豊沢ダムでは、岩手県県南広域振興局農政部北上農村整備センター豊沢ダム管理所の照井勇司主任技能員から、「豊沢ダムは花巻市及び北上市にまたがる約4,250haの水田地帯に農業用水を安定供給するための重要な水源施設である。また、監査廊の目的はダムの漏水や揚圧力の状況を確認するためである」ことなどについて説明を受けました。

 その後、参加者全員が豊沢ダムの監査廊に入り、およそ45度の急な階段に驚きながら、ダム管理の苦労を、身を持って感じているようでした。

 次の新田堰頭首工では、豊沢川土地改良区高橋憲幸業務課長から、「豊沢川の水をゲートの自動制御による管理で用水路に引き込み、農地にかんがいしている。また、平成15年度に、鋼製転倒ゲートからゴム堰に改修された」ことなどについての説明を受けました。

 その後、バス移動の車中で大幹線用水路の大分水工の説明を受け、次の見学地である宮野目揚水機場では、口径600mm、揚水量1.328㎥/sの両吸込渦巻ポンプを見学し、「豊沢ダムだけでは末端農地のかんがい用水が不足するため、その補水として北上川から直接揚水し供給している」ことや、「太陽光パネルで発電した電気の売電収入を、揚水機場の電力料金に充てることで、維持管理費の軽減を図っている」ことなどの説明を受けました。学生たちは、地階に配置されたポンプを覗き込みながら、揚水機場の重要な役割についての説明を、感心した様子で聞き入っていました。

 最後に本会で、水土里ネットいわての概要とともに、水土里情報システムによる農地情報の管理や、UAV(ドローン)の撮影による動画、画像情報の蓄積や、関係機関との共有などを紹介しました。また、学生自らがパソコンやタブレットで水土里情報システムを実際に操作し、豊沢川地区管内の水利施設の情報を確認したほか、UAVで撮影した山王海ダムの3D画像から堤体の標高や距離を測る操作を体験しました。

 終わりに、見学会に参加いただいた岩手大学3年次生は、コロナ禍の影響により現地での施設見学の機会が少なかったため、今回の施設見学会は貴重な体験となったようです。どの施設でも熱心に話を聞き、興味深く見学している姿から、次代を担う技術者として期待できる人材であると感じました。この施設見学会は、岩手県農林水産部農村計画課と県南広域振興局農政部北上農村整備センター及び豊沢川土地改良区のご協力によって開催することができました。本会では、県内各団体における農業農村工学技術者の育成に向けた取組みを、今後も継続して実施する予定です。

【豊沢ダムの説明をする照井主任技能員】

【監査廊内で揚圧力施設を見学する学生】

【宮野目揚水機場の説明を受ける学生】

【新田堰頭首工にて説明をする高橋業務課長】

【本会で水土里情報システムの説明を受ける学生】

 

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